インド

1 章 序章 

    • 2018年度予算案の概要

      ■2018年度予算案の総論
      2018年2月1日、インド政府は2018年度インド国家予算案を発表しました。前年に引き続きインフラ設備や農村地区のさらなる拡大支援、公共事業を通じて景気向上を図る姿勢が目立ちました。
      2018年に州選挙、2019年に現行ナレンドラ・モディ首相の再選を左右する下院総選挙が控える中で、票田となる農民や低所得者、高齢者向けの政策を中心とした発表となりました。インド政府は農民所得を2022年までに倍増させる計画の中で、農作物の生産コストの1.5倍での最低価格保証制度や、需給バランスを元に農作物生産を最適化する仕組み、生産者から購入者へ直接販売可能にする販売市場、生産した農作物がより高い価格で販売されるような食品加工設備など様々な施策を提案しています。加えて貧困・社会的弱者家庭向けの新たな世界最大の国家健康保険スキーム(National Health Protection Scheme)を発表し、5億人に対して年間上限50万ルピー(約85.5万円)を保障するとしました。
      税金面では、所得税にかかる3%の教育目的税が4%の健康・教育目的税に変更されました。さらに、所得税法9条を修正して、オンライン企業に課税することが発表されました。このデジタル税はインド国内に物理的な所在がなくとも収益に対して課税を行いますが、何を以てインド国内での収益とするかについては議論が必要なようです。

    • 直接税の変更点

      ■個人所得税(Income Tax Rate for Individuals)

      1. 個人所得税の基本税率に変更はありませんでした。
      2. 医療手当や通勤手当に関しては、控除限度額が現在の34,200ルピー(医療手当15,000ルピー通勤手当19,200ルピー)から40,000ルピーに引き上げられています。(所得税法16、17条)
      3. これまで雇用者にのみ限定されていたNational Pension System Trustについて、今後すべての加入者に対して支給額40%まで個人所得税の免除が認められています。(所得税法10(12A)条)
      4. 医療保険料を複数年分一括で支払った場合、支払日の属する年において保険料の全額控除が認められていましたが、これが認められなくなります。一括で複数年分支払った場合においても、医療保険料の対象の年においてのみ医療保険料の所得控除が認められます。
      5. 60歳以上の高齢の居住者については、銀行や郵便局に預け入れた定期預金の利息収入について、所得税の免税範囲が1万ルピーから5万ルピーまで引き上げられています。また、高齢の居住者に関しては、5万ルピーまでの利息収入については、源泉徴収も不要です。(所得税法194A条)
      6. 60歳以上の高齢の居住者については、医療保険料や医療費の負担に関して、所得控除限度額が3万ルピーから5万ルピーに引き上げられています。(所得税法80D条)
      7. 60歳以上の高齢の居住者については、特定の重症疾患に係る医療費の負担に関して、控除限度額が6万ルピーから10万ルピーに引き上げられています。80歳以上のシニア居住者については、特定の重症疾患に係る医療費の負担に関して、控除限度額が8万ルピーから10万ルピーに引き上げられています。(所得税法80DDB条)
      8. これまで免税対象だったミューチュアルファンド(equity oriented mutual funds)から配当される所得については、2019年3月期以降、所得税10%が課税されます。(所得税法115R条)
       
       
      ■法人所得税(Income Tax for Domestic and Foreign company)  
       
      1. 2016年3月期の総売上高が5億ルピー以下の内国法人については、法人税の基本税率が25%適用されていますが、2017年3月期以降、軽減税率の適用範囲が5億ルピーから25億ルピーに引き上げられています。
      2. インド国内における従業員雇用を促進するための取り組みとして、雇用期間が年間240日以上の従業員(月額給与25,000ルピー以下に限る。)を新たに雇用する場合、給与支給額の30%を上限として税額の追加控除(翌3年間に限る。)が認められています。2018年4月以降、靴や革製品を取り扱うアパレル業界に関しては、雇用期間が年間240日ではなく150日に短縮されています。(所得税法80-JJAA条)
      3. インド国内の農業促進のための取り組みとして、農業運営会社については、2018年4月から2024年3月までの5年間に限り、年間100万ルピーまでの農業収入に係る法人税の100%免税が認められています。(所得税法80PA条)
      4. 現金流通の管理のため、10,000ルピーを超える現金による信用取引、もしくは投資が認められず、課税の対象となります。(所得税法10(23C)、11条)
      5. インド所得税法(Income tax Act)の第44B, 44BB, 44BBA, 44BBBに該当する外国企業に対してMAT(Minimum Alternate Tax: 最低代替税)の適用から免除されます。
      6. 起業の促進のため、“Eligible Business”の定義がインド産業政策促進局(Department of Industrial Policy and Promotion)によって変更・拡大されます。また、インド財政法80-IACが改正され、2021年3月31日までにスタートアップした当該企業については一定の法人税の控除が受けられるようになります。(以前は2019年3月31日までとされていました。)
      7. インド所得税法(Income tax Act)の第56条(2)(x)が改正され、親会社からインド子会社への資産の移動、反対にインド子会社から親会社への資産の移動取引については課税免除の対象となります。
      8. インド所得税法(Income tax Act)の第143条(1)(vi)が改正され、2018年4月1日以降の法人税申告の修正が不可能となります。(以前の143条では法人税申告とForm26ASの内容が異なる場合、その修正プロセスについて明記されていました。)
      9. 会計年度中に25万ルピーの金融取引を行う全ての会社はPANの取得が義務化される予定です。また、会社の代理として金融取引を行う取締役、提携先、CEO、マネージングディレクター等もPANの取得が必須となります。
       
       
      ■個人所得税・法人所得税共通
       
      1. インド所得税法(Income tax Act)の第271FA条で定められる、財務諸表の提出遅延による
      ペナルティが1日あたり100ルピーから500ルピーに変更される見込みです。また、そのよう
      な遅延に対して税務局からのノーティスがあったにも関わらず、さらに遅延した場合のペナルティについても1日あたり500ルピーから1,000ルピーに変更されます。
      2. 納税があるかどうかに関わらず、申告を行っていない会社に対し起訴が可能となります。
      3. インド所得税法(Income tax Act)のチャプターVIAのC(“特定の所得に対する控除”)に
      て定められる控除は同法の第139条に定められる期日までに申告しなければ控除が受けられな
      くなる事となります。
      4. 重量貨物車両(12トン以上)は1か月に1トンあたり1,000ルピーで推定の所得を算出す
      る事となります。
      5. 所得計算と開示規則(Income Computation and Disclosure Standards)に基づき、事業所得
      に関するインド所得税法のチャプターIV-DとチャプターXIVが改正されます。
      6. Section 2(22)(e)にて規定されるみなし配当はグロスアップ抜きで30%の配当分配税が課さ
      れます。
      7. 製造業を営む国内の新会社に対する25%の譲許税率はChapter XIIが定める、特定の収入に
      係る特別税額の課税となります。
      8. 所得税及び法人税に加算する教育目的税(Education cess)は、健康教育目的税(Health and
      Education Cess)に置き換えられ、税率は、3%から4%へ引き上げられています。
      9. E-assessment(オンラインによる税務局への対応)が導入されます。これにより、納税者
      と当局担当者間の効率性と透明性の促進が望めます。(所得税法143(3A), 143(3B), 143(3C))
       
       
      ■キャピタルゲイン課税
       
      1. 2014年10月1日以降の投資で有価証券取引税(STT: Securities transaction tax)を支払って
      いる場合の長期キャピタルゲイン課税の免税措置がなくなり、有価証券等の譲渡益が10万INR
      を超える場合は、キャピタルゲイン課税10%が適用されます。2018年1月31日以前の投資に
      関しては、2018年1月31日時点の株式の価額を取得価額として譲渡益の計算を行います。(所得税法112A条)
      2. 土地や建物などの不動産の売却については、不動産登記局が認める金額を売価が下回る場
      合、当該売価をもってキャピタルゲインの計算が行われていました。2018年4月以降、売価と
      不動産登記局の採用金額との差異が5%を超える場合に限り、売価を使用することが認められず、
      不動産登記局が認める金額を使用する必要があります。(所得税法43CA, 50C、56条)
       
       
      ■その他の変更
       
      1. 提出期日や契約書の定義を明確化することで、国別報告書の申請規定を合理化します。
      2. 罰金や検察といった行為を認可する当局の役割を正当化するためにブラックマネー法を改
      定します。
       
    • 間接税の変更点

      ■関税

       

      輸入品に課税される教育目的税(2)と高等教育税(1)を廃止し、新たにSocial Welfare surchargeと呼ばれる社会福祉税(税率10%)が導入されています。然し、ガソリンやディーゼル、銀、金などの特定原料に関しては、3パーセントの軽減税率が継続されます。

       

       
       

      ■その他の変更

      1. 今年度の財政赤字は3.5%で、2018年度は3.3%へ減少すると予想されています。

      2. インド政府は、インド国内の雇用促進のための取り組みとして、全産業における新規雇用(金額要件有)につき、企業負担分のEPF12%を負担することを発表しました。

    • Goods and Service Taxについて

      ■Goods and Service Taxについて

      201771日を以てGoods and Service Tax(以下GST)が導入されました。GSTは、インド国内において物品及びサービスに対して課される間接税の税率、手続等を統合することで、現行で問題になっていた不要な納税額の負担、納税額の計算、納税手続きや節税対策等の多大は負担を克服することを目指しており、100年に1度の税制改革と言われています。また、租税制度の簡素化により、課税当局および納税者が税額等を誤解するおそれを減らし、税務訴訟の件数および意図せぬ法令違反のリスクを減少させる効果が期待されています。基本税率は0%5%12%18%28%5パターンとなり(嗜好品等についてはさらに追加税(Cess)が課せられる)、サービス税や販売税など多くのGST課税対象に18%が課せられました。

       

      GSTは以下の間接税を除き、全ての間接税が統合されました。

      ・基本関税(BCD: Basic Custom Duty

      ・オクトロイ

      Local Body Tax

      ・印紙税(Stamp Duty

      ・原油製品(※数年後にGSTに組み込まれる予定)

       

      GSTには3種類あり、それぞれIGSTIntegrated GST: 統合GST)、CGSTCentral GST: 中央GST)、SGSTState GST: GST)と呼ばれます。IGST税率はCGST税率とSGST税率を足した税率と同じとなり、例えば18%の場合、IGST=18%CGST=9%SGST=9%となります。以下が基本的なGST構図です。


       
       
       

      GST導入後は現行のほとんどの間接税が統合された為、今まで異なる間接税により相殺が出来ず、余分なコストとなっていた税も相殺が可能になりました。

      例えば、以下のスキーム下では商社(Trader)が支払った関税は所定の登録を行う事により、製造業(Manufacturer)に相殺クレジットを転嫁し、製造にかかる物品税(Excise Duty)と相殺することが出来ていましたが、クレジットを転嫁する際にマージン額を公表しなければならないという問題がありました。

      しかし、GST導入後は基本関税(BCD)以外の関税が全てGSTに統合された為、マージン額を公表することなく、製造業(Manufacturer)に販売する際のVAT/CSTと相殺が可能になりました。したがって、商社にとってはGSTが大きなメリットであると言えるでしょう。

       

       
       
       
       

      GSTコードの登録は州ごとの登録が必要であり、各州に工場、販売拠点、オフィスを構えている場合は各地で登録を行う必要があります。また、GST申告は月に3回(仮受GST/仮払いGST/月次申告)、年1回の年次申告を行う必要があります。