インド

1 章 序章 

    • 2019年度予算案の概要

      ■2019時年度予算案
      2 0 1 9 年2 月1 日、ナレンドラ・モディ政権は暫定予算案を発表しました。
      2 0 1 9 年5 月に下院総選挙が控える中で、農家に対する収入補助や、中低所得者層に対する税負担軽減措置、
      公的年金制度の導入など、有権者数の多い層に焦点を当てた内容となりました。
      ゴヤル財務相代理は同予算案を国家が発展するために必要不可欠だと発表しており、
      インド経済全体のカスケード効果を期待しています。

      農家全体の約7 2%が同政策の恩恵にあずかるとされ、2 0 2 5 年までにはその対象は9 0% に上る見込みです。
      また、当予算案講演では2 0 1 4 年5 月のナレンドラ・モディ政権発足からの実施政策と
      その成果が強調されたと同時に、Ayushman Bharat(国民健康保険制度)、
      Pradhan Mantri Bhartiya Janaushadhi Pariyojana(ジェネリック医薬品を提供するために開始された
      政府によるキャンペーン)、Make in India(インド国内外の企業からの投資促進政策)、
      JanDhan Scheme(インド公的スキーム)、 Start-Up India、 MUDRA やIBC 等の
      さまざまな機関で特徴的な政策も提案されました。
       
      一方で財政赤字の対GDP 比は3.4% と従来目標の3.1% から修正され、当初よりも赤字がやや拡大する見通しです。
      20 2 0 年度は3.0% とする目標が堅持されたものの、一部のアナリストからは税収の見通しが楽観的で、
      財政面よりも選挙対策に重きが置かれており、ポピュリズムを優先した予算案との声も挙がっています。

    • 直接税の変更点

      ■個人所得税(Income Tax Rate for Individuals)
       
      [ 個人所得税の基本税率]
      個人所得税の基本税率に変更はありません。

      [ 個人所得税の所得控除限度額]
      従業員課税所得からの標準控除額(Standard Deduction)については4 万ルピーから5 万ルピーへの増額が提案されました。
      (所得税法16 条)

      [ 個人所得税の還付額]
      従来、年間総所得が3 5 万ルピー未満の居住者に対する還付額は2,500 ルピーでしたが、
      年間総所得が50 万ルピー未満の居住者に対して1 万2,5 0 0 ルピーの還付額が提案され、事実上の税金負担義務の免除となります。
       
      年間総所得が50 万ルピー以上の居住者に対しては、還付は認められない見通しです。(所得税法87A 条)
       
      [ 住宅売却による長期資産販売差益の再投資による課税免除]従来は、
      住宅売却から生じる長期資産販売差益を他の住宅資産購入に充てる場合、購入物件1 軒に限り、課税所得からの免除が可能でした。
      本予算案では長期資産販売差益が2,0 0 0 万ルピーを超えない限り、2 軒目の住宅投資にも適用可能となりました。
      同規定は、生涯の中で一度のみ適用可能とされます。(所得税法54 条)

      [ 自己占有財産に対する課税免除枠の拡大]
      従来、自己占有財産を複数所有している場合は、1 軒のみ自己占有
      財産として認められ、2 軒目以降は名目家賃に対して課税対象となっ
      ていました。本予算案により、2 軒目まで自己占有財産として課税免
      除として認められます。(所得税法24 条)
       
       
      ■法人所得税(Income Tax for Domestic and Foreign company)
       
      [ 法人税の基本税率]
      法人税率の変更はありません。軽減税率25% を享受できる要件として、
      総売上高が25 億ルピー未満の国内法人に限られるという点も変更はありませんが、
      会計年度2 0 1 8 ~ 2 0 1 9 年度の軽減税率適用の可否は、従来の会計年度2 0 1 5 ~ 2 0 1 6 年度ではなく、
      2 0 1 6 ~2017 年の総売上高を基準に判定される旨が発表されました。
       
      [ 最低代替税の税率]
      最低代替税の税率に変更はありません。
       
      [ 住宅開発による収益の益金不参入]
      2 0 1 9 年3 月3 1 日以前に所轄官庁に承認された開発計画に限り、益金不算入が可能でしたが、
      2020 年3 月31 日まで期日が延期されました。(所得税法80-IBA 条)
       
      [ 在庫物件の課税免除期間延長]
      土地および建物の未売却在庫に対する、名目上賃料の課税免除期間は、
      所轄官庁より建設完了証明書を入手した会計年度末日から1 年とされていたが、2 年に延期する旨の提案がなされました。
      不動産開発業者にとっては追い風となる見込みです。 
       
       
       
       
      ■個人所得税・法人所得税共通
       
       [ 源泉徴収対象となる利息収入額の基準額引上げ]
      銀行、郵便局、およびその他機関から得た利息収入における源泉徴収対象の基準額が、
      1 万ルピーから4 万ルピーへ引上げられることが提案されました。(所得税法第194A 条)
      同提案により、源泉徴収に係るコンプライアンス適用となる取引が大幅に減少するため、各機関の負担が軽減されます。
      また、金利収入に対する源泉税額控除が発生するがゆえに、課税収入は持たないものの、
      控除額還付のために確定申告を余儀なくされていた、低所得者層の負担も軽減されます。
       
      [ 源泉徴収対象となる賃貸料の基準額引上げ]
      賃貸収入に対して源泉徴収対象となる基準額の1 万8,0 0 0 ルピーから2 万4,0 0 0 ルピーへの引上げが提案されています(所得税法194I 条)。
       
       
       
    • 間接税の変更点

      ■関税

       

       モディ政権の掲げる“メイク・イン・インディア” 政策を促進する狙いで、3 6 品目の資本財の輸入に課される関税を撤廃しました。
      2 0 1 8 年度輸出額は前年比1 0.1 8% 増の2,4 5 4 億US ドルとなりました。

      ゴヤル財務相代理は、輸出は雇用を生み出し、製造を加速させるものだと強調しており、関税局の内部システムの改良も積極的に行われました。
      関税局は輸出入取引広域にデジタル化を導入する方針で、施策の一例としてRFID(Radio Frequency Identification)を用いることで、

      輸出時の物流改善を図る旨を公表しました。

       

       

    • Goods and Service Taxについて

      ■Goods and Service Taxについて
       

      政府は、2018 年4 月から2019 年1 月の期間に9,710 億ルピーをGST 税制の下で徴収しました。

      2019 ~ 20 年は7,610 億ルピーと想定しており、2 年前にGST 税制が導入された当初の目標税収額に達する見込みです。

      一方で、GST 税制の基盤が完全に整備されるのには時間を要する見込みで、

      2 0 1 9 ~ 2 0 年もGST 審議会は継続されるため、税率やスキームは引き続き変更されるでしょう。

      本予算案ではインド経済の大部分を占める中小規模企業に対して、下記の変更が発表されました。


      ・ GST 登録義務が免除される小規模事業者の基準が、会計年度内
      の売上高が200 万ルピーから400 万ルピーに上昇されました。
      ・ コンポジションスキームが適用となる製造会社・販社の基準が、
      年間売上高が1,000 万ルピーから1,500 万ルピーに変更されま
      した。適用時のGST 税率は一律1% で、年1 回の申告が認めら
      れています。
      ・ 小規模サービスプロバイダーは、前年会計年度売上高が5 0 0 万
      ルピー以下だった場合にコンポジションスキームが適用となり、
      現存の18% から一律6%(中央GST3% + 州GST 3%)のGST
      税率が課されるようになります。
       

       
    • その他の変更点

       [ 小規模農家に対する収入補助]
      2 ヘクタール未満の土地を所有する零細経営の農家に対して、年間6,0 0 0 ルピーの現金配布を行うとする案が提案されました。
      受給対象となる農民は1 億2,000 万人に及ぶとされます。
       
      [ 特定業種従事者の融資ローン返済における優遇措置]
      畜産業と漁業従事者が融資ローンの返済日を遵守する場合、従来の金利2% 分の補助金を5% に増額する旨を発表しました。
       
      [ 非組織部門就業者に対する公的年金制度の導入]
      月間所得が1 万5,0 0 0 ルピー未満の非組織部門労働者に対して、
      60 歳から3,000 ルピーの年金支給を行う旨が発表され、対象となる労働者は1 億人に上る見込みです。

      [ 映画の検閲窓口の統合]
      従来は複数存在したインドの映画製作における検閲窓口が1 本化されました。

      [ 漁業省の設立]
      海産物の輸出量を増加するため、漁業省を別途設立することが決定しました。

      [ 印紙税徴収管理上の変更]
      1899 年インド印紙税法が改正され、証券市場商品に課される印紙税の徴収管理を単一の機関、単一の場所で行う旨が提案されました。
      印紙税は金融商品毎の課税となり、証券取引所、決済会社または預託機関を通じて単一の場所で徴収されます。
      徴収された印紙税は、購入者の居住地に基づき、州政府間の円滑な分配が期待されます。
       
      [ 中小零細企業向けローン申請手続の迅速化と金利優遇措置]
      1,0 0 0 万ルピーを上限とする中小零細企業向けのローン申請手続を1 時間以内に行うシステムが導入され、
      GST ライセンス取得済の中小企業のローン申請に対して金利2% 分の助成金を認める提案がされました。

      [ 北東州のインフラ整備の強化]
      北東州のインフラ整備に分配する予算割当額を21%増加する提案がされました。

      [ デジタル・ビレッジ政策]
      2 0 1 9 年度から5 年間にわたり、電子マネー取引を推進して現金取引を廃止する“デジタル・ビレッジ” の村数を10 万まで増やす意向が発表されました。
       
      [参考資料・ウェブサイト]
      ・ Deloitte Touche Tohmatsu India LLP “News letter of Glimpses of Interim
      Budget 2019" 2019 年2 月1 日発行
      ・ Nangia Advisers LLP “News Flash Volume 109 - India Interim Budget,
      2019”2019 年2 月発行