カンボジア

2 章 投資環境

    • 経済

      ■経済動向
      2000年代に入って以降、カンボジア経済は安定し始め、長期内戦からの復興を果たしています。それを象徴するものとしてGDP成長率はASEAN域内でもトップクラスであり、2004~2007年までの間は二桁成長を成し遂げました。
      アンコール遺跡群を中心とした観光収入、縫製業・農業の好調、住宅や工場などの建設ラッシュ、そして、外国投資や市中銀行の融資が増えたことが要因となっています。

      2009年には、アメリカのサブプライムローン問題に起因した世界金融危機の影響により、縫製品の輸出や韓国などからの観光客の減少により経済が大きく落ち込みました。
      この落ち込みからの回復力を示しているのが翌年の経済成長であり、再び6%程度の経済成長率を実現し、中間層の台頭や消費市場の広がりにより、今後も安定的に高水準で推移していくことが予想されます。


      [基礎的経済指標]
      カンボジアでは、徴税が適切に行われていないことや投資法による免税措置(詳細は後述)が広範囲にわたることから、歳出を賄うほどの政府歳入がなく恒常的に財政赤字が続いています。2008年には一時的に黒字に転じたものの、世界経済危機の影響を受けて翌年には再び赤字になり、1兆8,307億リエルと過去最大の赤字となりました。なお、2011年の赤字額は1兆1,615億リエルと減少傾向となっています。
      また、外国援助総額に占める借款の割合も増加していることもあり、しばらく財政赤字が続くものとみられます。今後は政府による財政健全化が当面の課題となるでしょう。



      物価の上昇問題については、2001年前半のインフレ率は緩やかでしたが、2008年には石油価格の上昇により25%のインフレ率を記録しました。このことから、石油価格の上昇は経済に与える影響が大きいことがわかります。

      また、2006年を100とした消費者物価指数は上昇し続けており、6年間で約1.5倍となりました。
      なお、2013年のインフレ率は2.9%であり、中国やベトナムなどのアジア諸国と比べると、インフレ率は比較的低くおさまっています。


      ■貿易
      インドや中国での生産コストの上昇を受けて、カンボジアなどの低賃金が期待される国への衣料産業のシフトが全世界的な傾向となっています。カンボジアは輸出の80.3%を衣類が占めており、その大部分がアメリカやヨーロッパに対するものとなっています。輸入の58.9%は衣料原料であり、衣料生産のために隣国のベトナムや中国から調達されています。
      アメリカ発の金融危機による衣料品輸出の減少が懸念されましたが、影響はそこまで大きくなく、低価格の衣類を安定的に製造することができました。そのおかげで金融危機の回復後、日本、中国、韓国などに対する輸出が急増しています。


      出所:JETRO及び外務省


      日本に対する貿易を見ると、輸入が小型船舶、車両などの工業製品が中心であるのに対して、輸出は靴や衣料などとなっています。2009年までは、日本に対する貿易収支は赤字となっていましたが、2010年以降貿易黒字となっています。
      出所:外務省及び国際協力銀行

      ■産業別動向
      カンボジアの産業は、観光と農業が中心であり、全体の7割以上を占めています。

      [観光・サービス]
      カンボジアには、アンコールワットをはじめ世界遺産が多数存在し、貴重な資源の一つとなっています。現在、カンボジアを訪れる人の90%以上は観光目的であり、観光業はカンボジアの経済成長に大きく貢献しています。ある民間会社の調査によると、「日本人が一生に一度は行きたい世界遺産ランキング」の3位に、アンコールワットがあげられています。

      [農業]
      農作物輸出政策
      「メコン川流域に住んでいれば飢え死にという言葉がない」と古来言われているように、多種類の米や食物が収穫できます。フン・セン首相の「カンボジアを世界のライスバスケット(米びつ)にする」という発言の通り、カンボジア政府は2015年までにコメの余剰を400万トン以上とし、少なくとも100万トン以上を精米して輸出するという目標を掲げています。
      労働人口の約7割が従事する農業部門には、この包括的な政策は今後の農村部における所得向上を図る上で大変重要なものであり、カンボジア経済の発展と貧困の削減につながることが期待されています。GDPに占める割合が30%超であることから、農業はカンボジアの主要産業となっています。

      [縫製業]
      米国からの最恵国待遇
      縫製業の発達が最もカンボジア経済の発展に貢献しているといわれています。1997年に米国からの最恵国待遇の付与により、アメリカ向けの繊維縫製品の輸出が非課税となったため、外国投資の呼び水となりました。これにより、プノンペンを中心に安い労働力を求めて外国投資による縫製の工場の建設が増加しました。

      カンボジア工場改善プログラム
      「カンボジア工場改善プログラム(Better Factories Cambodia)」とは、国際労働機関(ILO:International Labour Organization)によって管理され、政府、カンボジア衣服工業会(Garment Manufacturersʼ Association in Cambodia)及び労働組合によって運営されています。ILOのチェックリストに基づいて500近い項目を縫製工場に対して抜打ち検査し、賃金、労働時間、騒音、労働契約、児童労働など多岐にわたって調査されます。これにより、生産性の向上や労働条件の改善へとつながっています。
      縫製業は多くの雇用者を確保できる産業(労働集約産業)であるため、農業と同様に国の発展や貧困削減に貢献するものと期待されます。
       
    • Latest News & Updates

      【 カンボジア証券取引所5社目の上場を目指す会社出現】
       
      不動産業を営むCentury 21 Mekongは、Cambodian Securities Exchange (CSX)カンボジア証券取引所への上場の意向を発表しました。
      同社CEOのChrek Soknim氏はSecurities and Exchange Commission of Cambodia (SECC)カンボジア証券取引委員会に先月、上場の意向を表す文章を提出したとしています。
      上場は2017年下半期を目指しています。
       
      現在Century 21 Mekongの支店数はプノンペンに一店で、スタッフの数が15人であり、中小企業の部類に入るでしょう。
      同社が上場となると、CSX初の不動産サービス業企業となり、また初の中小企業向け成長市場Growth Boardとなります。成長市場Growth Boardでは最低50万ドルの運営資金があればよく、財務業績の発表も1年分のみが要求されます。
      CSXは2012年の発足以来、上場企業数に苦しんでおり、現在までに4社が上場しているのみとなっています。この4社は全て通常の市場に上場しています。
      今後、カンボジアでは、上場企業の増加が、経済発展に大きく寄与すると考えられるため、さらなる周辺法制等の整備が期待されています。
       
    • 投資環境

      ■金融(株式)市場
      2011年7月11日に、カンボジア政府と韓国証券取引所がそれぞれ55%と45%の合弁により、カンボジアでは初となるカンボジア証券取引所が開設しました。
      なお、「証券セクターに対する優遇税制に関する法令70号」によれば、上場企業は法人所得税の10%軽減(第4条)、利息・配当の源泉徴収税が50%軽減(第5条)の優遇措置が受けられます。

      2012年4月18日に、プノンペン水道公社がカンボジア証券取引所に上場しました。この他、テレコムカンボジア、シハヌークビル公社といった2社の国営企業が上場に向けて準備しています。民間企業の中では、ACLEDA、Mobitel、CATS等の大企業が上場を予定しているといわれています。

      ■為替レート
      カンボジアは、ほぼUSドル化した経済となっており、都心部での買物では通常USドルを使用し、リエルは1USドル未満の支払や、農村部での使用となります。
      過去1年分のカンボジアの通貨であるリエルの動きを見てみると、リエル高の傾向にあることがわかります。2011年4月には一時3,900リエル/USドル台を記録しました。このリエル高は、基礎的なものと季節によるものの2つの要因が考えられます。
      基礎的なものとしては、アメリカの量的金融緩和策によるUSドル安があります。特に、2010年11月から2011年6月まで実施された緩和策(QE2:Quantitative Easing Mark2)は、FRB(連邦準備制度理事会)による6,000億USドルもの米国債の買入が行われたため、大量に供給されたUSドルが各国の市場に大きな影響を及ぼしたといわれています。
      季節的なものとしては、3月末の税金の納付期限と収穫期におけるコメの買い付けにより、リエルが必要となるためです。

      為替レートは、2015年5月23日現在、1円=33.56リエルとなっています(exchane-rate.org)。


      ■外国直接投資(FDI)
      次ページのグラフが示している通り2004年からのカンボジアへの外国直接投資額は急激に増え、2007年には8億USドルを突破しました。
      特に際立っているのは、中国や韓国による投資であり、日本は完全に出遅れてしまっています。

      出所:国際協力銀行

      2011年に入り、高賃金のタイやベトナムから、低廉かつ豊富な人材確保が可能なカンボジアへの労働集約型産業の生産シフトが活発になりました。
      海外からの直接投資については、2010年はGDP比5.4%、2011年はGDP比6.0%に達するものと見られています。カンボジアはタイやベトナムに次ぐ、次の世代の新たな投資先として注目され、自動二輪車メーカーの拡張投資も見受けられます。中には、組立以外の塗装や溶接といったプロセスの導入など、最終製品の付加価値を高めようとする動きも見られます。
      今後は、ベトナム南部からカンボジアへの工場移設が活発になるとみられ、安定的な成長を続けることが予想されます。


      ■インフラ
      [道路、鉄道、水運]
      カンボジアで最も注目される道路建設が、西はタイ・バンコク、東はベトナム・ホーチミンシティを結び、国内ではプノンペンを通って横断する、アジアハイウェイ1号線の建設計画です。このルートは東南アジアの海沿いの3カ国を横断する幹線道路という意味で「第2東西経済回廊」とも「南部経済回廊」とも呼ばれています。カンボジア国内では、プノンペン以西は、舗装された国道5号線と、その北でシェムリアップを通り未舗装区間も多い国道6号線の、2ルートがあります。プノンペン以東では、ネアックルンでメコン川に橋が架かっていなかったため、日本の援助で2015年4月にネアックルン橋が開通しました。
      タイ-ベトナム間を陸路で結ぶと海路より大きく時間短縮できますが、カンボジアを陸路で通過する際に関税が必要となるなどネックもありました。しかし最近、日本の運送会社が保税輸送ライセンスを持っている地元運送会社と提携してタイ-ベトナム間のサービス提供を開始するなど、第2東西経済回廊が本当の経済回廊として機能しはじめています。


      カンボジアの北西部で既にタイから鉄道が延びていたポイペトと、その東に位置するシソポンをつなぐ道路の完全舗装化や鉄道の修復など、インフラの整備も充実してきています。

      将来的にはシンガポールから中国雲南省の省都「昆明」まで延長予定の、「ミッシング・リンク」と呼ばれるプノンペン-ベトナム国境間の鉄道建設が計画されています。
      2011年7月に開催された「第4回日メコン外相会議」において、日本、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ、カンボジアの代表らは、ミッシング・リンクへの対応を含むメコン地域のインフラ整備について協議しました。
      この計画は中国の資本によるものであり、完成後にはカンボジアと中国との距離が一気に縮み、モノとヒトの大移動が可能となります。

      交通網などインフラの整備も、メコン川への橋梁設置など目に見える進展が現在進行しています。西のタイと東のベトナムとを結ぶ大経済圏につながれば、既に1,000社を超えている在タイ日系企業の「第2拠点」として、カンボジアに進出する動きも出てくるでしょう。
      進出に際して立地を慎重に選定することは必要ですが、いざカンボジアに拠点を置いてみれば、メコン川が海に到達し、発展に沸くASEANの中央に位置する国であることを、街で行き交う雑多な言葉、市場に並ぶ海産品、建設ラッシュと経済発展の熱気、そして若いカンボジア人の笑顔の中で感じることができます。

      [電力]

      燃料タイプ別の電力供給(2012)
      出所:ELECTRICITYAUTHORITYOFCAMBODIA

      カンボジアで事業を行うには、ディーゼル及び重油を燃料とした自家発電機を利用しなければならず、電力不足が一つの悩みとなっていましたが、2011年12月、カンボジア最大の水力発電であるカムチャイ・ダムが操業を開始しました。中国の資本により建設されたこのダムは、2.8億USドルを投じられ、総出力は195メガワットとなっています。
      政府は更に、2019年までに合計2,045メガワットの電力を供給できる9つのダムを完成させる予定で、今後、電力不足は徐々に解消されていくものと思われます。
      2011年3月に発生した東日本大震災により、原子力発電に対する不安が世界中に広がりました。「安全」と「環境」を両立できる水力発電の大規模導入例として、カンボジアのダム建設計画は、国内のみならず国外からも大きな注目を集めています。

      [通信]
      通信手段は、徐々に国民全体に行き渡ってきています。固定電話の使用率は2009年で0.4%であったのに対し、2012年には4%になりました。また、携帯電話についても、2009年は44.8%であったのに対し、2012年には132%と大きく増加しています。
      郵電省(MPTC:Ministry of Posts and Telecommunications)によると、2014年のインターネットと電話の加入者数は、それぞれ502万人と36万人まで増えました。

      なお、2012年1月段階の国内大手のインターネット通信料金は、速度Mbpsで使い放題のものが月額80USドル程度となっており、別途デポジットや機器のレンタル代がかかります。日本と比べるとインターネット環境は未発達のため、現地の通信手段はやはり携帯電話がメインとなります。
      携帯電話の利用方法は、日本と違いプリペイド方式のみとなっています。前払で一定の通話時間分を購入するシステムで、チャージする金額によって通話可能時間が異なります。また、通話料金は長距離電話の場合、毎分0.05USドル程度となっています。

      ■人的資源
      ポルポト時代の大量虐殺を背景に、カンボジアの人口ピラミッドは少しいびつな形をしており、30代以上の世代が極端に減少しています。しかし、今はその暗い歴史からの立ち直りを見せており、人口は着実に増加しています。世界銀行の発表によると、2013年には1,470万人になりました。
      全人口の半分以上が25歳以下という若い労働力を供給でき、他のアジア諸国と比較した月額賃金を見ても安価なものとなっています。

      (USドル)
      出所:JETRO

      過去の内戦により、有能な人材の喪失、法律を含む文献、インフラなど各方面での破壊の痕跡、国土の自由な往来を妨げる埋設地雷、そして国連主導で成立した政府の統治能力の低さなど、さまざまな面で悪影響は確かにあります。
      それでも、人口ピラミッドが示すように、20歳代以下の人口が喪失分を補う「若い国」として現在、勢いよく発展を遂げています。


      (万人)
      出所:国際通貨基金 (2013年以降は推測値)

      ■その他の投資メリット・デメリット
      [一般特恵関税制度]
      カンボジアは、先進国が供与する一般特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)の受益国の一つとなっています。
      GSPとは、原産地ルールなどの条件を満たしていれば、受益国から輸出される物品に対して輸入関税が免除もしくは引下げられる制度です。

      更にカンボジアは、後発開発途上国(LDC:Least Developed Country)に該当するため、他の開発途上国に比べ追加的な優遇措置を受けることができます。
      これにより、日本など先進国へ輸出する場合、タイやベトナム、中国に拠点を置くより、品目によっては、関税の面で有利になることがあります。

      なお、日本への輸出については、5,690品目に対して特恵関税が適用され、衣料や履物など、カンボジアの代表的輸出品が含まれています。

       
    • 投資規制

      ■禁止業種
      政府発行の政令によって、不適格リストが規定されており、下記の事業については、外国企業による投資が禁止されています(投資法改正法の施行に関する政令111ANK/BK号附属1条)。

      ・向精神剤及び麻薬物質の製造・加工
      ・国際規則または世界保健機構により禁じられた有害性化学物質、農薬・農業用殺虫剤、及び化学物質を使用したその他の商品で、公衆衛生及び環境に影響を及ぼすものの製造
      ・外国から輸入する廃棄物を使った電力の加工及び生産
      ・森林法により禁止されている森林開発事業

      ■出資比率の規制
      カンボジアでは、他のアジア諸国のように出資比率に関する上限規制はありません。従って、上記禁止業種以外では、外国資本100%の現地法人設立が原則として認められています。これは、カンボジアでは地場資本の産業がほとんど存在しないため、保護すべき対象がないことが要因と考えられます。いずれにしても、外国資本に対して最も開かれた国の一つであるといえるでしょう。
      ただし、公開会社形態(後述)の企業に対する外国資本の出資は49%までしか認められていません。

      ■資本金に関する規制
      新規登録の最低資本金は、400万リエル(約1,000USD:2015年7月31日現在)です。ただし、投資優遇措置の申請を行う場合は、別途最低投資額が定められております(P.287参照)。

      ■外国企業の土地所有に関する規制
      憲法44条において、外国企業及び外国人は土地を保有できないことが明記されています。そのため、外国企業は以下の表のいずれかの方法により土地を利用することになります。

      なお、土地以外の不動産については、アパートやコンドミニアムなどの集合住宅について、2階より上層階部分について外国企業(個人)の所有が認められます。

      ■外国人の雇用上限
      カンボジア国民の雇用を守るため、外国企業は、原則としてカンボジア国民の雇用を優先させなければなりません。
      ただし、カンボジア国内で人材の獲得ができない場合には、外国人管理者、技術者または専門家を雇用することができます(特別経済区政令11条)。改正投資法18条によれば、その上限は総従業員の10%までとされています。

      ■外国為替規制
      1997年9月に制定された「外国為替法(Law on the Foreign Exchange)」において、「公認銀行を通じたものであれば、外国為替取引に対しては制限しない」旨が規定されています。

      [国外送金]
      1万USドル相当以上を送金する場合は、カンボジア国立銀行へ送金額の届出を行い、認可を得なければなりません(外国為替法17条)。

      [外貨の持出し]
      1万USドル相当以上の支払、またはこれに相当する国内通貨を輸出入する場合は、税関へ申告をしなければなりません(外国為替法12条、13条)。

      [資金の借入]
      資金の借入については国内外問わず、居住者と非居住者の間で行うことができます。ただし、貸出と返済は、公認銀行を通して実施しなければなりません(外国為替法18条)。

      [その他]
      金や未カットの宝石等の貴金属を輸出入するためには、事前にカンボジア国立銀行へ届け出る必要があります。
      また、1万USドル以上、または1万USドル相当の国内通貨を輸出入する際には、税関へ申告しなければなりません(外国為替法12条、13条)。
       
    • 投資インセンティブ

      カンボジア王国に対する投資に関する規則は、1994年のカンボジア王国投資法、2003年のカンボジア王国投資法改正法(以下、「投資法改正法」という)及び2005年の改カンボジア王国投資法改正法に関する施行細則(政令第111ANK/BK号)に規定されています。
      インセンティブを受ける方法として、適格投資プロジェクト(QIP:Qualified Investment Project)による優遇措置、特別経済区制度及び特定分野に対する優遇措置など、さまざまな制度が用意されています。

      ■QIPへの投資優遇措置
      適格投資プロジェクト制度は、雇用創出及び産業育成を目的とした制度であり、外資誘致政策の一つです。
      適格投資プロジェクトを実施するためには、カンボジア開発評議会(CDC:Council for the Development of Cambodia)へ申請を行い、認可を得なければなりません。
      認可を取得できれば、下記に記載している法人税の免税など、種々の優遇措置を受けることができるため、進出にあたっては、ほとんどの企業が利用を検討することになります。

      [優遇措置の内容]
      ワンストップ・サービス
      継続的な投資促進サービスの向上のために、カンボジア開発評議会(CDC)内にカンボジア特別経済区委員会が設立されています。カンボジア特別経済区委員会の管理の下、投資プロジェクトの登録から日々の輸出入許可に至るまでワンストップ・サービスを提供することになっています。

      法人税免税または特別償却の優遇措置
      企業は通常20%の法人税を納めなければなりませんが、QIPの免税措置を受けた場合は、最長9年間の法人税免税を受けることができます。その内訳は、①始動期間、②3年間、③優先期間からなります。始動期間とは、「最終登録証明書発行の日から利益を計上するまでの年」、または、「最初に売上を計上してから3年間」のいずれか短い方となります。優先期間(最長3年)は、投資業種と投資金額により認められる延長期間のことであり、個別案件ごとに当局が決定します。デメリットとしては、法人税免税を受けるために、毎年「義務履行証明書」を取得する必要があり、財務状況などの開示をしなければなりませんので、間接コストがかさむという点があげられます。
      それでも、上記の通り最長9年間免税されることから、投資の際に是非活用したい優遇措置の一つといえるでしょう。
      また、法人税の免税適用を受けない場合は、固定資産の40%の特別償却が認められ、製造・加工工程において使用される新品または中古の有形固定資産価額の40%について特別償却することができます。

      輸入関税免税の優遇措置
      QIPの優遇制度の目玉のもう一つが輸入関税の免税です。すべてのQIPに共通するものは、生産用設備、建設用資材の輸入免税です。
      国内志向型QIP(Domestically oriented QIPs)は、生産設備、建設資材及び輸出品生産のための生産投入材に対して輸入関税が免税されます。国内志向型QIPは生産投入材について、申告ベースで輸入関税の還付を受けることができます。つまり、輸入の時点では課税されますが、直接輸出、または輸出産業に供給した場合は、輸出した商品の生産に用いた生産資材の数量に応じて、四半期報告書の審査を経て関税免除される、という仕組みになります。
      輸出志向型QIP(Export Oriented QIPs)については、生産設備と建設資材の他に、原材料、中間財、副資材の輸入関税が免除されます。輸出志向型QIPは、何%以上を輸出しなければならない等、具体的基準は定められておりません。
      裾野産業QIP(Supporting Industry QIPs)は、生産設備、建設資材、原材料、中間財、生産投入用副資材の輸入関税が免除されます。なお、製品を100%輸出企業に提供しなかった場合や輸出できなかった場合は、その部分について輸入関税及びその他の税金が課されます。


       
      [優遇措置を受けるための最低投資額]
      投資法改正により、投資優遇措置の対象が拡大、更に最低必要投資額の引下げが実施されました。これにより、中小企業でも、QIPによる優遇措置の恩恵を受けることができるようになりました。
      業種ごとの最低投資額は、以下の表の通りです。


      ■優遇措置不適格プロジェクト
      下記のプロジェクトについては、優遇措置を受けることができません。

      ・ 各種の商業活動(輸入、輸出、卸売、小売、免税店)
      ・ レストラン、カラオケ、バー、ナイトクラブ、マッサージ店、フィットネスセンター
      ・ カジノ、賭博、観光、専門的サービス
      ・ 銀行、金融機関、保険会社、金融仲介業の通貨・金融サービス
      ・ 三ツ星を下回るホテル
      ・ 不動産開発、倉庫設備、駐車場
      ・ 新聞、メディアに関する活動(ラジオ、テレビ、報道、雑誌、映画、ビデオ製造等)
      ・ 水路、道路、空路による運輸サービス(鉄道分野への投資を除く)
      ・ タバコの製造
      ・ 自然林の木材を使用した木製品の製造・加工
      ・ 50ha未満の複合娯楽施設(ホテル、テーマパーク、スポーツ施設、動物園等を含む)

      ■QIPの申請手続
      特別経済区(SEZ:Special Economic Zone)へ投資を行う場合は、カンボジア開発評議会(CDC)内に設置されたカンボジア特別経済区委員会に申請することで3営業日以内に投資条件付登録証が発行されます。これにより、QIP申請の認可が決定され28営業日以内に最終登録証明証が発行されます。その間は、カンボジア特別経済区委員会が関連省庁から必要なライセンスの取得を代行します。
      特別経済区以外へ投資を行う場合において、優遇措置を受けるときは、カンボジア投資委員会へ申請しなければなりません。最終登録証明証の発行までの流れは、SEZへの投資と同様となります。


      ■日系企業に対するサービス
      カンボジア開発評議会にはジャパンデスクが設置され日本人スタッフが常駐しているため、下記のサービスを受けることができます。

      ・ ビジネスモデルの構築(投資相談窓口)
      ・ QIP申請サポート
      ・ 会社設立サポート(人材、会計、法律、物流、現地調達、建設、不動産)
      ・ 増資、株主変更、通関、QIP更新などのアフターサービス
      ・ 投資セミナー実施支援
      ・ カンボジア視察実施サポート(各種ロジスティクス、視察アレンジ)
      ・ 日本カンボジア官民合同会議実施サポート

      ■特定分野に対する追加優遇措置
      QIPに対する投資優遇措置以外に、省令などにより下記の特定産業に対する追加的な投資優遇措置が規定されています。


      ■特別経済区における優遇措置
      現在、カンボジアには32の特別経済区があり、製造業のためにインフラが整備されています。特別経済区に入居している企業は、QIPと同様の優遇措置に加え、付加価値税(VAT:Value Added Tax)の免除を受けることができます。
      ただし、工場建設時に支払った多額のVATを還付してもらえない企業が多いようです。カンボジアでは、一度支払った税金の還付を受けることが難しく、制度と実際の運用が異なることがまだ多いのが現状です。
      その他、投資申請やビザ取得手続の代行や、労務問題などトラブルの対応相談を行うことができます。

      [特別通関手続(経済省令No.734)]
      国境から20km以内に立地する特別経済区に対しては、輸出入において手続の簡素化が図られています。
      輸入については、国境の検問時に貨物内容のコピーを提示するのみとなっています。輸入申告書の提出及び税関によるコンテナの封印は不要であり、貨物は「シームレス・ルート」を通って輸送され、特別経済区入口で税関簡易申告書を提出した後に工場へ直送することができます。
      輸出については特別経済区内で税関手続ができるため、輸出書類とともに貨物を国境へ輸送し、国境の検問所で税関輸出書類を税関職員に提出することで国外へ輸送することができます。
       
    • Latest News & Updates

      【ミネベア カンボジアで第3工場建設】

      日本の電器部品メーカー、ミネベアは、2016年度末までにカンボジアで第三番目となる工場の建設を完了させる予定です。

      同社は現在プノンペン経済特区Phnom Penh Special Economic Zone (Phnom Penh SEZ)にある2工場でマイクロアクチュエーター と小型モーターを製造しています。2011年よりカンボジアで1億の投資を行っており、今回は新しい製造ラインを第3工場に設置する予定です。
       
      現在のカンボジアでの従業員数は5300人であり、Phnom Penh SEZ総労働者数の1/3ですが、第3工場稼働後には、同社の従業員数は2万人になり、一層大規模な工場となります。
       
      技術力のある労働者不足に悩むカンボジアですが、ミネベアは長期的な視点で人材育成に力を入れており、それが実りあるものになっていると評価されています。政府も人材育成を教育カリキュラムの重要ポイントとしており、今後益々社内教育を通して技術力ある労働者の育成が期待されます。
       
      日本企業でカンボジア進出の成功の象徴的存在であるミネベアが、どのようにカンボジア社会に一層の貢献を示していくか、これからの発展もさらに期待されています。
       
       
    • 工業団地情報

      ■特別経済区
      [概要]
      カンボジアには特別経済区(SEZ)が数多くあり、その地域内に工業団地があります。工業用の工場をバランスよく配置するために分譲された団地内には、工業用のエリアの他に、道路、排水路、中央廃水処理施設、洪水防止システム、電気、水道、電話などの公共施設やインフラが整備されています。

      カンボジアでの工業団地の歴史はまだ浅く、2006年6月にポイペト特別経済区が第1号として認可され、2008年8月にはプノンペン特別経済区が稼働しました。

      [特別経済区]
      カンボジアは東南アジアの中心にあり、タイやベトナムへのアクセスの利便性から東南経済回廊の活用が期待されています。2015年現在において8カ所が稼働しており、建設中のものを含め32の特別経済区が認可されています。

      ここでは、カンボジアにある22の特別経済区のうち、主要なものを中心に見ていきます。

      [プノンペンSEZ]
      上記表を以下のURLをベースにアップデートいただきます様よろしくお願い致します。全体の経済特区の数は、計32(内稼働中8)となっております。

      プノンペン中心街から20㎞、空港から8㎞に位置し、東京ドーム約77個分の広さを持つプノンペンSEZ(PhnomPenhSEZ)には、日系企業の他、中国、台湾、韓国、インドの企業が入居しています。
      カンボジアにある唯一の日系工業団地であり、他の工業団地よりも不動産賃借料等のコストは高いですが、インフラ設備・サービスの面ではかなり充実しています。日本人スタッフが常駐しているため、会社設立における各種申請から工場の生産開始までのサポートに万全が期されています。
      シンガポール資本との合弁で設立された送電会社により、電力の安定供給を実現しています。団地内には浄水設備と下水設備が完備されており、その他、銀行、レストラン、ドライポート、コンビニなどの施設があります。コンビニには、日本人向けの日本食材や日本酒などが取り揃えられています。
      今後、プノンペンSEZへの日系製造企業の進出が増えることが予想されますが、カメラ、プリンター、家電等のセットメーカー、自動車産業を核とする部品産業、食品加工産業、付加価値のより高い縫製、製靴産業、欧米先進諸国からの製造業の入居が期待されています。

      [シハヌークビル港SEZ]
      シハヌークビル港SEZ(Sihanoukville Port SEZ)は、プノンペンから南西へ約240kmの地点にあり、輸出志向型の企業の誘致を目的として設立されおり、日本のODAとして開発されました。
      プノンペンから車で約3時間半、タイやベトナム国境へは約3時間の距離に位置し、国内での移動のみならず、シンガポール港と香港の2大ハブ港とも直接つながっているため、大メコン圏(GMS:Greater Mekong Subregion)の中でも南部経済回廊としての役割を果たしています。大型船が入港でき、カンボジアの海上輸送の拠点となっています。
      海に面しており、海岸での海水浴や国立公園などが観光スポットとして知られ、五ツ星のソッカビーチリゾートなどの高級ホテルやレストランが街中にあります。また、ダイビング、クルージング、サイクリング、ゴルフ、カジノ、ナイトクラブ等のアミューズメントも充実しており、衣食住を充足できる環境が整っています。2009年8月には、ターミナルを整備するために71億7,600万円を限度とする円借款貸付契約が調印され、日本の建設会社による高水準のインフラを利用できます。
      その立地上、カンボジアの物流拠点となることは間違いがなく、輸出志向型の製造業など、多くの企業の進出が予想されます。2012年2月には、王子製紙が段ボール工場を、同SEZに設立することを発表しています。

      [マンハッタン(スヴァイリエン)特別経済区]
      ベトナム国境地域に位置し、ベトナムの国道1号に通じる、このマンハッタン(スヴァイリエン)特別経済区(Manhattan(Svay Reing)SEZ)は、日本企業にとって必要な設備が整った工業団地の基準を満たしたものの一つとして注目されており、現在も開発が進められています。
      ガソリンスタンド、警察署、消防署、行政管理センター、病院の建設が予定されており、行政管理センターには、「ワンストップ・サービス」事務所、行政管理局オフィス、従業員訓練、銀行、郵政、通信、保険、通関手続などを提供するオフィスが設置される予定です。その他、五ツ星のカジノホテル、三ツ星のビジネスホテル、スーパーマーケット、レストラン、ショッピングなどの施設や、投資企業と居住者の双方が負担する従業員宿舎の建設など生活環境も整う予定になっています。
      現在はバベット地域の電力ネットワークと連結していますが、将来的には配電変電所や自家発電所を建設する計画となっています。
      汚水処理工場、給水工場、倉庫及びコンテナターミナル、ごみ処理場のインフラ整備も進められています。